故意に恋焦がれ恋に泣く

台風がきます。大変です。暑いのでビールが飲みたいです。しかし飲むわけにはいかないのでレモンスカッシュばかり飲んでいます。まるで、本当に好きな人が、実はずっと恋をしていて、私はその代理として抱かれているような虚しさが心を襲います。「今、私が飲んでいるのはレモン味のカクテルなの」と思い込むようにしています。肉を食べられないお坊さんが豆腐を食べるようなものです。要は思い込みです。ビールに、恋をしています。いや、一度は蜜月がかなり続いていたのです。恋愛というのは、片思いで振られるよりも、一度は好き合っていて別れる方がよっぽど辛いです。ビールとの蜜月は10年近く続きました。日々の疲れを癒してくれる存在でした。年を取るにつれ私の思いは募っていき、今までは夜だけのつきあいだったのが20代中盤には昼間から逢うようになりました。27歳の時には500ml6本を空けるという偉業を成し遂げました。うちは隔週火曜日が資源ごみ(ビンとカン)の日なのですが、いつも45リットルのゴミ袋2つ分のカンを捨てていました。そんな濃密なつきあいをしていたビールとも別れの時がやってくるのです。そう、永遠なんてありえないなんて陳腐な歌は履いて捨てるほどありますからね。逢えなくなって、どれくらい経つのでしょう?また逢える日を信じて、枕を濡らす毎夜です。