黙読と音読

小さな頃から、黙読のできない人が嫌いだった。
授業などで本読みをしていたら、同じ本を読んでいるので音読している人の声につられてそこを繰り返し読んでしまうからだ。しかも学級は45人もの児童がひしめきあっていた。

ある日教師が『黙読する力をつけなさい』と言い出した。大人になっても音読するようでは恥をかく、と。そりゃ仕事するのに書類一枚一枚の内容をいちいち口に出されてはたまったものじゃない。『口で読むのではない、目で読みなさい』と先生は言い、われわれは実践した。
これは『他人に迷惑をかけてはいけない』という教育の一環だったのかもしれない。